思考のよせなべ

清水喜文ブログ

狐の死に場所

 

 ――雪が降っている。

 狐は見えなくなりつつある目で、空を見上げていた。

 

 人が作った道を横切ろうとしたのがまずかった。

 突然現れた人を乗せる鉄の化物に突進され、跳ね飛ばされたのだ。

 私は死ぬのだろうか。

 

 狐の脳裏に、子供たちの姿が浮かんだ。

 私がいなくなっても、あの子たちは生きていけるだろうか……。

 生きたい。

 あの子たちのもとへ行かなければ。

 

「君は助からないよ」

 声が聞こえた。

 見ると、いつの間にか、カラスが立っていた。

 ねえ、カラスさん、と狐はカラスに話しかける。

 お願いよ、私を運んでくれない。

「どこにいったとしても、君の運命は変わらない」

 カラスは言う。

 

 君は正直だね。

 そっか、私は死ぬのか。

「間違いないね」

 ああ、それでか、と狐は呟く。

 それで君は、そこで待っているんだね。

 私が死ぬのを。

 

 でもね、と狐は微笑む。

 ここでは死なない。

「どこでならいいの?」

 土の上。

「なんで? どこでだって同じだろ?」

 違うわよ。

 全然違う。

 こんな人間の作った道の上だと、土に還れないじゃない。

 

 文 清水喜文