思考のよせなべ

清水喜文ブログ

もしも、「お金」という言葉の使用を禁じたら

 

20☓☓年☓月☓日。

世界中の国で、同時にある実験が行われることとなった。

それは、お金に関する言葉の使用を、一切禁じるというものだ。

 

お金を使用しての買い物は出来るが、通貨の単位を口に出してはいけないし、紙に書いてもいけない。

紙幣や硬貨を見せて、「それを何枚と、それを何枚」と指をさしてもいけない。

商品の価値を、別の物で例えなければならないのだ。

 

円、ドル、ユーロ、元、バーツ……、などといった通貨の単位が使用できなくなったら、市民はどのように買い物をするのだろう。

 

これは、その疑問に答えるための壮大な実験の記録である。

 

 

 

ケーキ屋さんの場合。

 

店員「いらっしゃいませ」

 

客 「すみません、お誕生日のケーキを欲しいのですが」

 

店員「はい。かしこまりました。メッセージはお入れしますか?」

 

客 「はい。『タロウくん、お誕生日おめでとう』とお願いします」

 

店員「では、お代金は2千……。いや、ショートケーキ10個分です」

 

客 「ごめんなさい。ショートケーキのお値段が分からないので、違う例えで…」

 

店員「そうですね……。では、サンマ15匹分です」

 

客 「あら安い。それでしたら、あれと、これも頂こうかしら」

 

店員「ありがとうございます」

 

客 「では、これで」(と、財布から紙幣を取り出す)

 

店員「え~、天然物の鯛、一匹分を頂いたので……」

 

客 「……」

 

店員「サンマ8匹分と、イワシ2匹分のお釣りです」

 

 

 

 

 

おもちゃ屋さんの場合。

 

店主「いらっしゃいませ」

 

客 「さあ、好きな物を選びなさい」

 

客の息子「あれが欲しい」

 

客 「それだけで良いのか? 遠慮はするなよ」

 

客の息子「じゃあ、あれも。…それからあれも欲しい」

 

客 「いくらだ?」

 

店主「最初に言われた物が、『貧しい国に住む、栄養不良の子供100人の入院費1日分』で…」

 

客 「……」

 

店主「次のが、『パレスチナで、子供たちを栄養失調から守る牛乳と、栄養強化ビスケット10人分を1か月分』で…」

 

客の息子「……」

 

店主「最後のが、『貧しい国の子供をポリオから守る予防接種50人分』でございます」

 

客 「……全部、貰おう」

 

店主「ありがとうございます。『坊ちゃんのお小遣い3カ月分』頂いたので…」

 

客 「……」

 

店主「『カンボジアで子供が1か月学校で学ぶことが出来る分』のお釣りです」

 

 

 

文 清水喜文