誰がために、名言は在る
【富は無限?】
「競争心はあなたの富に限界をもたらします。空気がなくなってしまうことのないように、宇宙の無限の富もなくなることはありません。何も奪うことなく、欲するすべてが手に入ることを知りなさい」
これは、アメリカの自己啓発作家ジョセフ・マーフィー(宗教者、著述家 / 1898~1981年)の言葉。
この言葉をシンプルにして、「富は無限にあるのだから、欲すればすべてが手に入る」と、「金を引き寄せる」系の方々が、好んでよく使う。
富を資源や財産と捉えると、混乱します。
いや、有限だろう、と。
大地も、水も、森林も、米も、野菜も、家畜も、魚も、空気も……。
人類が重力に捕らわれている間は、地球にあるものだけで終わりです。
人が行う奉仕も、そして、お金すらも同様です。
思考は現実になる、と信じているマーフィーは、「それ位の気持ちで生きなさい」と言いたかっただけだと思うのです。
だから醜く奪い合うな、と。
「人生最高の幸福は富でも名誉でもありません。自分のしたいことを見つけ、取り組むことです。人はそれを『生きがい』と呼んでいます」
同じマーフィーの名言でも、これは有名ではないですよね。
【時は金なり?】
「時は金なり」
そう言ったのは、アメリカ建国の父と呼ばれるベンジャミン・フランクリン(米国の政治家 / 1706~1790 )です。
「時は人間が消費しうるもっとも価値のあるものなり」
これは、古代ギリシアのテオフラストス(哲学者、博物学者、植物学者 / 紀元前371~287)の言葉。
「あなたが持っている最大の資源は時間なのです」
そして、カナダ出身の自己啓発作家ブライアン・トレーシー(作家、講演家 / 1944~)。
二人が「時が最も価値がある」と述べているのに対し、フランクリンは「時は金そのもの」としています。
そして、ほとんどの者は、フランクリンの言葉しか知らない。
ましてや、米国の歌手 レオタイン・プライス (ソプラノ歌手 / 1927~)が言った次の名言も知らない。
「究極の成功とは、自分のしたいことをする時間を自分に与える贅沢である」
【強者生存?】
「適者生存」
チャールズ・ダーウィン (英国の自然科学者 / 1809年~1882年)
これは、「適者=強者」とされ、強い者が生き残ると置き換えられる。
この世は、「弱肉強食」なのだ、と。
「強い者が生き延びたのではない。変化に適応したものが生き延びたのだ」
これも同じダーウィンの言葉。
現代の生物学では「適者」ではなく、「運の良い者」が生き残るという考え方もあり、それは 「運者生存」と呼ばれています。
この「運者生存」を支持するビジネス成功者なんて、見た事ないですよね。
【そういえば…】
祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらわす
おごれる人も久しからず
ただ春の世の夢のごとし
たけき者も遂には滅びぬ
偏に風の前の塵に同じ
なんて名言もありましたね。