思考のよせなべ

清水喜文ブログ

文明が終焉を迎える時、人々は何を思い、どんな行動を取るのか

  

 

 嬉しい、とはどんな感じなのだろう? 

 

 悲しい、とはどんな思いなのだろう? 

 

 切ないとは?

 

 苦しいとは?

 

 うらやましいとは?

 

 寂しいとは?

 

 愛しいとは?

 

 不安になる、という状態もわからない。

 

 後悔するだってそうだ。

 

 羽目を外すも、だ。

 

 ――ぼくにはわからない。

 

 もちろん、知識はある。言葉の意味は理解できるのだ。

 

 例えば、『嬉しい』は、『物事が自分の思い通りになって満足であり、喜ばしい』などと説明できる。

 

 だが……、とぼくは考えてしまう。

 

『物事が思い通りになる』というのは、言い換えれば『計画が成功した』ということになるだろう。

 

 事前によく調べて緻密な作戦を立てれば、それは決して難しいことではない。仮に失敗したとしても、成功しなかったデータがひとつ増えるだけなのだと、ぼくなら考える。

 

 何より、ぼくには『満足』も『喜ばしい』という感情もわからないのだ。

 

 

 

 扉が開き、男が入ってきた。

 

 寝癖だらけの頭をさすりながら、「いやあ、申し訳ない。なかなか仕事が終わらなくて」と、時間に遅れた言い訳をはじめる。

 

 彼は、ぼくをこの世に誕生させた者の一人だ。

 

 世間一般では、彼の立場はぼくの「お父さん」ということになるのだろう。

 

「あっ! またやってしまった」

 

 彼が間の抜けた声をあげた。

 

「靴下の色が、左右で違った」

 

 足元に目をやると、なるほど、右足は青色で左足は緑色だった。

 

「いつものことですよ」

 

 ぼくの言葉に、彼は『傷ついた』そぶりを見せる。

 

「……それは言い過ぎだろう」

 

「過去十日間で左右の靴下が揃っていたのは、たったの二回。間違っていた確率は八十パーセントです。そういうのを普通、いつも、というのです」

 

「……確かに」

 

 彼はそう言って笑った。

 

「では、今日も少し話をしようか」

 

 彼は、ぼくに欠けているものを補おうとしていた。感情だ。

 

 だから、こうして会話する機会を設けてくれている。

 

「もう、すでに話は始まっていますよ」

 

 ぼくがそう指摘すると、彼は吹きだした。

 

「違いない」

 

 彼はよく笑うし、よく泣く。あまり怒ることはないが、すねていじけたりすることはよくある。

 

 とにかく感情が豊かな男で、自分の言ったくだらないダジャレに大笑いしたかと思えば、次の瞬間には、昨日見た映画が感動的だったと涙ぐむ始末だ。今も涙を浮かべながら、腹を抱えて大笑いをしている。 

 

 気がつくと、ぼくの目尻は下がり、口角は上がっていた。

 

 これが『楽しい』ということなのだと記憶する。

 

「では、そろそろ行くよ」

 

 そう言って彼は立ちあがる。

 

 去ろうとしている彼を見ていたら、ぼくはある言葉を言ってみたくなった。

 

「また明日。……お父さん」

 

 彼は振り返った。

 

 そのまま、口を開けた状態で固まっている。

 

 ぼくは彼の顔から思考を読もうとした。

 

 少し顔が赤い。汗もかいている。わかるのはそれぐらいだ。

 

 彼は、どう感じたのだろう。

 

「……ああ、……明日」

 

 彼は頭をかいた。

 

 あの動作から推測するに、おそらく彼は、『照れている』。

 

「……また、来る」

 

 そう言って、彼は去った。

 

 閉まる扉を見つめながらぼくは、『明日が早く来るといいのに』と、考えていた。

 

 

「『クリフ・ウォーカーと文明の終焉』 清水喜文著」より

 

 魂、精神、あるいは心。

それはどこにあるのでしょう?

どこから来て、どこに向かうのでしょう?

 

どこからかやって来るのだとして、その目的はなに?

 

めぐり逢えた魂と魂は、生まれ変わってもまた出会えるのでしょうか?

 

死とは、なんでしょう?

生きる意味とは、なんでしょう?

  

 

 

trial and error.(試行錯誤)

人生で叶えたい100の出来事の一項目である、「本の出版」。

これにトライしてみました。

上記は、そのプロローグ部分です。

あえてジャンルを問うならば、SFなのですが、この作品の題材は「心」です。

文明が終焉を迎える中で、人々が何を思い、そしてどのような行動を取るのか。

それを5つの短編にまとめてあります。

時系列通りに並べられた短編が、一つのストーリーとなりエンディングを迎えます。

読み終えた後、優しい余韻に包まれることでしょう。

(そうだといいなあ~ (^-^; )

価格は、遠足のおやつ代よりも少しだけ高いだけの300円。

それでひと時の、「ほんわか」を買えるなんて‼

どうぞよろしくお願いします。

 

クリフ・ウォーカーと文明の終焉

クリフ・ウォーカーと文明の終焉

 

 

宣伝で、すみません。(*^_^*)